「32歳で乳がんになりました」by Shelly


「メイが乳がんになったらしい」


昨夜、インスタグラムにメッセージが届いた。

そこには綺麗に髪を剃り上げた彼女の姿があった。

彼女は、私を含め彼女の友人たちに募金を頼むことをしなかった。

のちに知ることになるのだが、彼女が自ら助けを頼まなかった理由はこうだ。


「優しい言葉を見ると、涙がすぐに出る。そして止まらなくなるから。本当に悲しくなるから。」

今日は、そんなメイとの思い出をお届けしたい。


そうだな、思い出をお届けするといっても、悲しみでいっぱいの文章にはしたくない。

だって、メイとの思い出は明るく輝いているものばかりなのだ。


正直いうと、今もこれを打ちながら涙でMacBook のキーボードが壊れないか心配しているくらい涙が止まらない。

悲しくてどうしようもない。

でも、やはりできる限り楽しい気持ちで読んでもらえるように書こうと思う。

読んでくださる皆様、ぜひこの記事をシェアしていただけますと嬉しく思います。

まずはメイの紹介から。


彼女は2017年にアメリカに来た中国人の留学生。

オペアプログラム(海外の一般家庭にホームステイをして、
ベビーシッターをしながら語学留学などを行うプログラム)を通じてアメリカにやってきた。

英語は全く話せなかったし、もちろん知人など1人もいない土地へ。

彼女の印象を3つあげるとすれば、「かわいい」「よく笑う」「超まじめ」。

当時私たちは同じキャンパスで英語の勉強に励んでいた。

メイは本当によく笑う女の子で、可愛らしい上に気立てが良いので
先生にも友人たちにも皆に好かれる人気者の子だった。


お互い英語を話せないにも関わらず、楽しく身振り手振りで会話した思い出が記憶に新しい。

私たちが急速に仲良くなったのは、2020年頃。

コロナの影響もあり、ズーム授業になってお互い会えない期間が長かった。

逆に会える時間がとても貴重で、2人で多くの話をした。


我が家にメイを呼んで、韓国焼肉パーティーを朝の10時からやったこともある。

「朝の10時から焼肉を食べてるのって、うちらぐらいなんじゃないの?」

と笑いながらたらふく食べた。


この時期に共通していた話題、というか愚痴はこれだった。

「中国にはしばらく帰れなさそう、コロナの隔離がすごく大変で」

「私もそうだよ、日本もすごく厳しい。はやくコロナが終息したらよいよね」

さて、彼女が30歳を迎える10月、メイが私に相談をしてきた。


「ハロウィンと私のバースデーを兼ねて、パーティーを開催したいの!」という嬉しい相談だった。

学校の友達たちに声をかけ、私たちのパーティーの計画が始まった。

しっかり者の彼女は、まず最初に何を提案したと思う?


正解は、

「サニタイザー(除菌液)を入室前に皆につけてもらおう!」である。


風船はどうするとか、コスチュームは何を着るとか、そんな話題が最初に来ると思ったんだけど。

些細なことでも友人たちを思いやる彼女の優しい性格が私は大好きだ。

彼女は不思議の国のアリスのコスチュームで当日登場することにした。

早めに集合して、飾り付けを数人の女子チームで楽しんだ。


「あ!勢いよく息を入れちゃったから、風船が割れた!」

「やばい、Birthday のRの風船も割れちゃった!」

その時の写真がこちら。

かわいいメイの後ろにシルバーに輝く星の風船。Rの代わりに壁を彩ってるでしょ?

これは私の陳腐なアイディアなのだけど、

「シェリー天才だね!違和感ないよ!」

とメイたちは大絶賛してくれた。


本当に楽しいひとときで、皆で盛り上がった最高のパーティだった。

その年のクリスマスにはクラスの皆とランチを食べに行って。

年末には学校の先生も呼んでまたランチをした。

年も明けて2021年。


休み時間に彼女とカフェテリアでコーヒーを飲んでいる時に突然こう言われた。

「シェリー、実は彼氏ができたの!」

その日、私は突然金髪にして学校にいったのだが。

メイは相当それに驚いていたけど、それ以上に私は驚き、そして喜んだ。

その後しばらくして、彼を紹介してもらった。


メイから片時も離れず熱い視線を送る彼はメイをとても大切にしているのが伝わった。

翌年の2022年、なんと彼はメイにプロポーズをし、
あれよ、あれよという間に結婚式を迎えたのだ!

本当にいつも幸せそうに笑う2人。


お互いに家族を連れて、旦那さんたちを待たせたまま
ショッピングモールにあるChick-fil-A を食べながら何時間も女子トークをしたこともあったよね。

それが2023年1月のこと。もう、本当に最近の出来事。

あの時メイは私にこう言った。

「新婚のうちに、彼といろんなところに出かけるの!そうしてしばらくしたら、
子供が欲しいなぁ。でも1人でいいな。その子を大切に育てるの。
30代だし、まだ彼との時間を楽しみたい。ねぇ、いつか子供ができたら、一緒に遊ばせようね!」

2023年3月、メイから久しぶりにメッセージが届いた。


「シェリー、今ハワイに新婚旅行に来てるの。

日本のメイクグッズを買ってるよ!

マスカラもアイライナーも可愛い、日本のモノは最高だね!」

そうでしょ、そうでしょう。ジャパン最高よぉ!と返信をした。

私たちは「また近いうちランチ行こうね!」とテキストを締めくくり、
それ以来インスタにいいねするくらいで、メイとは連絡を取っていなかった。


今日の日時が2023年5月18日。

昨夜、友人からテキストが届いた。


「メイが乳がんになったらしい」


友人がたまたまフェイスブックで
メイのGoFundMeというクラウドファンディングのサイトを見つけたらしい。


私は悪い冗談だと思い目を疑ったが、すぐにウェブサイトを確認した。

メイは黒くて綺麗なロングヘアーをとても大切にしていたのだけど、
そのサイトに私の知るメイの姿はなくて。

綺麗に髪を剃り上げ、いつものように微笑むメイの姿があった。

「私たちは結婚1周年を祝いました。
その後すぐにステージ4の乳がんであることを診断されました。」

嘘のような事実が彼女の文章の中にあった。


メイは私を含め彼女の友人たちに募金を頼むことをしていなかった。

彼女は学校で出される宿題を忘れたことは一度もないし、
何かイベントがある際には率先してそれを手伝うような責任感の強い子だった。

優しくて強い彼女のことだから、1人で抱え込んでいるに違いないと思い、
当然何もしないでいることはできずに彼女に連絡をすることにした。


「メイ、実はこのサイトを見つけてしまったの。
本当に驚いて、辛くて、悔しくて、悲しい。涙が止まらない。
覚えておいてほしい、何があっても私たちはいつまでも友達だよ!
私にできることがあれば頼ってほしい。


協力できることがあれば何でもしたい。愛してる、メイ。大好きだよ!」

そう伝えたら、すぐに返事がきた。


「ありがとう、シェリー。本当に愛してる。

シェリーの思い通りに何でも情報をシェアしてほしい。
本当に助かる、嬉しいよ、ありがとう。」メイからの返事がきた瞬間、私は涙が溢れた。
その後に送られてきた返事の内容を見て、
もうどうすることもできないくらい涙が止まらなかった。

「正直、フェイスブックやインスタグラムで私は自分のことをシェアはしたくないの。
だから、シェアしてくれることは本当に嬉しい、ありがとう。


理由はね、すごく簡単に涙がでてしまうから。今の私は、泣くことが本当に簡単にできてしまうの。
誰かに優しい言葉をかけてもらう度に涙がでる。
本当に、おかしいくらい。すぐに涙が出るの。そして、止められなくなる。
ねぇ、シェリー。本当に愛してる。」


最後に一言こうあった。

“I love you so much. You are my friend forever until I die.”

「シェリーは私の大切な友達だよ、私が死ぬまで。」


死んだ後はどんな世界が待っているのか、私は経験したことがないし、想像もできない。

ただ、メイの中で葛藤している「死」というものが、
どんなに恐ろしいことなのかと思うと涙が止まらなかった。

ただただ本当に悲しくて、悲しくて、悲しかった。

彼女は最後にこう締めくくった。


「シェリー、今年は治療に専念するの。

きっと必ず、来年会おう!治療が終わったら、絶対に。」


最後に。

彼女は年が明ける2024年まで、乳がんの治療に専念をするそうです。

私には想像ができないほど、壮絶で、苦しく、先の見えない戦いになるだろうと思います。


I know everyone is struggling and I am trying not to feel guilty asking for help, but I just can’t do it…


私の中でも様々な想いがあります。

でも、自分のできることはしたいという気持ちに嘘はつけない。

そこでThey say編集長のご厚意に甘え、
コラム記事の下にGoFundMeというアメリカの寄付サイトのURLを
添付させていただきたいと思います。

日本国内からでも寄付が可能です。


寄付ができなくても、ぜひこの記事をシェアしていただけると嬉しく思います。

「こんな子が海外で頑張っているんだ」


「病気と闘っている、32歳の女の子がアメリカにいる」

そんな風に記事にたどり着いてくださる方が少しでも増えますように。


彼女の寄付を募るウェブサイトをここに掲載させていただくことに、

「オフコース!」

と答えてくださったThey say 編集長、ありがとう。


Go fund me ▷ https://shorturl.at/hlSY5


Shelly
米国在住。アメリカで暮らす“誰か”にフォーカスをあて、人物インタビューや日米の違いに関するルポを発信中。
Born in Japan. Background in actress.
Fascinated with human stories. Now living in U.S.

-Column

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