#2 人を名前で呼ぶという日本の美学 | The virtues of Japan


アメリカに住んでからというもの、わたしは人の名前を覚えるのが下手になった。

なぜなら呼ばなくても、関係代名詞があれば会話が成立するからだ。

目の前で話しているあなたの名前がわからなくてもYouで済むし、

同僚のあの子とのことを話題にするときもSheで済む。

彼の親友の名前がわからなくてもHeで済むし、適当にGuy(s)って言っときゃなんとかなる。


外国人の名前は覚えにくいし、発音しづらいので、最初は名前を呼ばなくていいことが楽でいいなと思っていたけれども、やっぱり、きちんと人の名前を呼ぶことは大切だなと最近になって思う。

(わたしの名前をちゃんと発音してくれる人がいなかったので、自分も下手な発音で人の名前を呼ぶのが申し訳ないという気持ちもあった)


日本で初めて誰かと会って、親しくなる過程で「〇〇って呼んでね」と呼び合う愛称を決め、最初にその名前を呼ぶのがちょっと恥ずかしかったりして、でも次第に慣れていって、その慣れが相手との関係性が深まった証になって・・・
みたいのって、日本ならではの感覚だと思う。

最初は怖かった上司が、〇〇さんから〇〇ちゃんって呼び方を変えてくれたりした時も、少し距離が縮まった気がして嬉しくなるし、

逆に仲良くなりたい同僚や後輩に自分がそうする時もある。


きっと、アメリカにも違う形でこのような美学があると思うが、うまく言えないがこのような感覚は日本らしくていいなと思うし、これからも大切にしていきたい。


日本語を勉強中の彼が、日本語で話すときにわたしのことを「あなた」と呼んでくる。

きっとYouという感覚でそう言っているのだと思うが、この美学を理解してもらうにはまだハードルが高いみたい。

いつかちゃんと本当の意味での日本語を話してくれる日がくるといいな。

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