「無所属の覚悟…ない」 I Hate, I Love by Soesbe


独身にならないための手はし尽くした。

プライドをなくし、周りには
「TVに出てる人なのに」とか「十分綺麗なのに」
とまで言われびっくりされ続けたが
一応教育テレビに出演している手前、大人の迷惑がかからない範囲では全てやった。
しかし、天才ってこの世にいるものね。
我ながらに独身の天才と思うようなミラクルがあまりに多く起きた夏であった。


私は生まれ持ったどうしようもない賜物を利用して、努力もすれば、
その世界でダントツ一番になれるというキャリア論を偉そうに後輩にも言ってきた。
誰にでも伝わる例でいうと冨永愛さん。
私自身が天性の独身であることから
「いっそのこと僧侶になっちまえば色々と美味しく生きていけるかも」
と周りに言っては笑いをとっていたが、もはや笑いごとじゃない。


自分自身が天外孤独だとワメきたいわけじゃない。
友達はいるし、通ってる教室もあるし、事務所にも所属してるし。
大変恵まれた環境にいながらも私は独身つーか無所属つーか、絶妙に孤立しているのだ。


現在、通っている教室は先生が完全無所属でやってきている人なので、教室自体暖かいがサウナ以上にドライなコミュニティー。みんな仲良くも個々で頑張る心地よい空間。
その中でもさらに私は男一人であり、トイレも更衣室も全部ひとり。
まるで楽屋。


現在、所属している吉田正樹事務所は
昨今の芸能界事情を考えると本当にラッキーな会社だと思う。フリーな芸能人も多い中、ここに所属でき、マネジメントも的確にしてくださり、何より会話ができる(芸能界、会話のできない人が多すぎますから)。
しかしこの会社はどちらかというとクリエイターの事務所。
出役というより作り手が多い。

タレントなんて最低な肩書きは私しかいない。
ちなみに(名前を並べるには大変恐縮ですが)うちの会社でテレビによく出る人間と言ったら私かダースレイダー先輩しかいない。


極め付けはバイト先。
金なき子な私はアルバイトもしている。レストランのウェイター。
うちの店では客席を2つのセクションに分けて担当する。なのに最近担当を振り分けるとき
「ソーズビーはフリーで」と言われる。

なにそれ?

要は全体的を見て足りないところを補う事とその際にお客さんと仲良くなり常連にさせるよう仕向けるポジションなのだとか…
ウェイターとして入社したバイト先ですら私をフリーにさせてくれるのだ。
言っておくがそんな花形のようで、気を遣いまくる仕事がしたいとは1ミリも頼んでいないしやりたくもない。
やるけど。


将来は世界を転々としたい私にとってみれば、
こんなに恵まれた環境にいても自然と無所属状態になり、
「タレント」や「フリー」と名付けられるこの天性は大変都合がいいはず。
そんな私にしか見えない着眼点をあまり信じてくれない人もいて最強にムカつくのだが、全員に理解される必要もない。身軽にやらせてもらってんのはこっちなんだから。

このコラムでも散々「結局人間は独り」的な大口は叩いてきたがやっぱり寂しい。


世間知らずな自分を恥じてしまう空気の読めるいい子ちゃんな私もいる。
ただ、職業「タレント」だぜ?つまんなくなってしまっては食ってはいけない。
しかもすでにそんなに食えてはいない。


昔ならこんな人間は見世物小屋のテレビのどこかに放り込まれたのであろう。処理先がバラエティやゴールデンとは限らない。
どうであれ、当時は殺伐としたあの環境で戦い、恥じらいを捨て暴れるだけでそこそこいいお金の貰えた(逆にそれしか消化方法のない)社会だったのだと思う。
ちょっと努力して今更民放に少し出られた身としては、
中途半端にしか殺伐としてない割に安報酬となってしまった最近のテレビに対しチェッとか思うけど。


それだけ私ら社会不適合者も生きやすい世の中になったのであろう。
言い訳も聞かなくなったってことよねー。
HSPとかADHDとかPTSDとか言葉が流行り、みんな弱さや仕方なさを認めやすくなったけど
「だからなんなんだ」だよな。さーせん。


なのでいっそのこと私は孤独を受け入れたい。
孤独な中でベストな状態の自分が出会った、楽しい波長の会う人や仕事と付き合えばそれが一番尊い。
自立しあった人同士が惹かれて、互いの時間を尊重して、好循環を生めばいい話。
それについていけない人はそれまで。
来るもの拒まず、去る者追わず。


無所属の天才である事になんのプライドも覚悟もなければ、むしろ寂しくて抜け出したいが、
引き続き、今ある恵まれた環境のケアを怠らず丁寧にタレントを磨いていこうと思う。

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