「アジアンヘイトクライム」by Shelly


優しい春の訪れとは裏腹に、衝撃的なニュースが世界中を襲った。
アトランタエリアにあるアジア系マッサージ店3軒が立て続けに銃撃事件に巻き込まれた。
恐らく次のエリアを銃撃するため、私の住むフロリダ州へ向かう道中に犯人は捕まったそうだ。


昔から存在する人種差別。
某前大統領が「COVID-19 はチャイニーズウィルスだ」と世界へ向けて失言したことは記憶に新しいが、それ以前から私達アジア人は揶揄され続けてきた。例えば去り際に「イエロー」と言われたり、「ヒロシマ」なんて言われることもある。
私は見知らぬタクシーのおじさんにカンフースターの物真似をされて笑われたことがあるのだけど、言葉で言い表せないくらい悲しかった。
大好きなアジア文化を馬鹿にされた悔しさと、言い返したら何かされるのではないかという恐怖心から苦笑いをするしか出来なかった。
私達アジア人には優れた忍耐力が備わっていると個人的に自負しているのだが、幸か不幸か今まで色んなことを我慢してきた人種とも言えるのではないだろうか。


今もなお世界中に根深く蔓延っている人種差別。
今回の事件がきっかけとなり”アジアンヘイトクライム”というワードが日常を飛び交うようになった。
様々な人がアジア人のことを考えるキッカケにもなった訳だが、恐怖に怯える私たちの日常に変わりはない。
いつ起こるか分からない、殺害の脅威に晒されている現地アジア人のリアルを今日はシェアしたい。


「私たちアジア人は、平和すぎる日常で育ってきたのかな。」
事件の直後、韓国出身の友人とZOOMでそんな話をした。


「韓国では、銃とか虐殺とか、そんな恐怖がほとんどない生活だったから。どうしたらいいのか分からない。
自分の身を守れとはいうけど、どう守ればいいのか分からないし。とにかく外に出ないようにしてるけど、それもしんどくなってきてて。コロナで生活が不自由な上、殺される恐怖の中生きていくことになるなんて、想像もしてなかった。」
と彼女は言った。


銃社会のアメリカに比べ、日本や韓国では一般人が銃を保有しているケースは限りなく少ない。
銃を持っている人に私は会ったことがないし、見たこともない。
日本においても銃が発砲されるような事件が全くない訳ではないが、限りなくゼロに近いだろう。


また、彼女は最近の生活状況をこのように語った。
「私は最近、スーパーに1人で行くことができずにいるの。主人が襲われたらどうしようって怖いけど、代わりに行ってもらっているのよね。私って酷いよね。コロナのワクチンを打ったら自由になれるって思ってたけど、今度は人種差別との戦い。この先どうなるんだろうね…」
悲しそうに、苦しそうに彼女は語った。


コロナにおけるパンデミックは、人々の精神をズタズタにする恐ろしいDisaster(災害)だ。
生きていくことへの恐怖から精神を病み、入院している人も少なくない。
そんな中、発生源である「アジア」へとコロナに対する怒りを向けてしまう人たちもいるのだろう。
しかし、だからといって私たちアジア人を無差別に攻撃することは決して許されることではない。

来たる4月5日、遂に一般人へのワクチン接種が可能になる(フロリダ州)。
年齢制限はあるものの、恐らく多くの人たちが年内に接種を終え、生活の幅が自由になってくるのかな、と想像している。


1年以上もの間ウィルスの脅威と戦ってきた私たち。
会いたい時に会いたい人と会える世界はいつ来るのだろうか。


Shelly
米国フロリダ州に住むアラサー女子。アメリカで暮らす“誰か”にフォーカスをあて、人物インタビューや日米の違いに関するルポを発信中。

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