「All art was once contemporary」by Daisuke Kazaoka


初めまして。
私はDaisuke Kazaokaと言います。関東で音楽活動をしている者です。
普段は歌を歌ったり、Live Dubという自分の作ったトラックにリアルタイムでミックス・エフェクト処理を施すようなパフォーマンスを行ってます。一番好きで聴いてきた音楽はジャマイカの音楽。そんなジャマイカ音楽に影響を受けた楽曲を作ってる次第です。
(サブスクでも配信等々してますので是非聴いていただけると...!)
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ひょんなことからTHEY SAYを運営している野坂さんに何かコラムを書いてみないかと誘いをいただいた。
テーマの指定は特になく、音楽の話でも日々の些細なことでもなんでも良いとのこと。

コラムを書くのは人生で初めて。何を書こうか考えた。
自分のライフタイムベストアルバム、人生を変えたあのライブ、アメリカでの大学生活、ジャマイカを旅した時の珍事、あの夜野坂さんと盛り上がったダブの話、、、

しっくりくるものが浮かばず月日が経ってしまったが、
会社からの帰り道、ふと自分の中で何かが湧いてきた。


時に街中でふと目にした言葉や、友人の口からぽろっと溢れた言葉に深く刺される時がある。
いつ出会うかはわからないし、意図的には作り出せない。
自分が探していたものが見つかったかのようなその感覚。
時として今後の人生ずっと残っていくようなものになり得る。


かつてそんな経験をしたことがあり、その後それは自分の頭の中のどこかにずっとある。
そして、最近になって思い返すことの増えたその言葉について書いてみようと思う。

18歳の時にアメリカに渡り、ニューヨークで数年間大学生をしていた。
そこでの生活はとても刺激的で、毎週何かのコンサートに行っては目を輝かせていた。
夏となれば毎日どこかしらでフリーの野外コンサートが開催されており、家に1日いるなんてことはほぼ無くその刺激を存分に浴びていた。

そんな強烈な刺激の数々は時に自分は何なのか、どこに進めば良いのか、を見えなくするものでもあった。どのジャンル、どの国や民族の音楽も最高のクオリティのものがそこにある。
自分が音楽をやる必要、自分が表現する隙間なんてもうないんじゃないかと思うこともあった。


「本物のレゲエ」

中高生の時によく聞いた。
ライブでも雑誌でも、誰かのインタビューでも。ジャパニーズレゲエは当時ブームの真っ只中。
テレビで活躍するようなアーティストもいて、それらを偽物のレゲエと揶揄する声もあり、
何が本物のレゲエかの議論が日本で多く交わされていた。
「レゲエアーティスト」と自分を位置付けていた当時の自分には、どこか「本物のレゲエ」を目指さなければならないと潜在的に思っていた。


私は日本人だ。両親二人とも(そして姉も)綺麗な直毛なのに、自分だけ地毛でアフロになるという、おそらく天文学的な確率の元授かった黒人的な要素を、どう誇りに思ったところで純度100%の日本人だ。


レゲエが好きでレゲエをやりたい。が、日本人が本物のレゲエができるのか?ジャマイカ人アーティストや、ジャマイカ系アメリカ人のライブをたくさんみた。
そこにあるのは紛れもない本物のレゲエ。自分はそこで何かができるのだろうか。
そんなことを常にうっすら抱えながら過ごしていた。


クイーンズからマンハッタンに向かう地下鉄Fラインの車内。
目の前に男性が立っていた。
スキンヘッドのガタイのいい白人の男性、その人はどこかのミュージアムのTシャツをきていた。
そのTシャツに大きく書かれていた。


All art was once contemporary


直訳すると「全ての芸術はかつて現代的であった」

その時、ものすごくハッとした。

今ある伝統的な芸能や古典とされている芸術だって、何百年、何千年と遡れば生まれた瞬間があり、その当時の人々にとっては新しい革新的なものだったに違いない。
新しく生まれたものを賞賛し熱狂する人もいれば、批判し追放しようとした人もいたと思う。


そして、今の時代にも新しい何かが生まれても良いんじゃないかと思った。
そしてそれは今ある本物の定義に沿うものである必要はないと思った。
その瞬間、潜在的な意識にあった「本物のレゲエ」を目指すべき、という考えから解放された気がした。それは自分が目指したいものではなかった。


自分はジャマイカの音楽に大きく影響を受けているが、アウトプットはレゲエじゃなくたっていい。
なんだっていい。大切なのは自分がいいと思う音楽を自由にやること。
俗に本物のレゲエアーティストと一般的に言われる方々に多大な影響を受けてきた。
レゲエ以外の音楽にもたくさん尊敬するミュージシャンがいる。
そういった偉人たちに最大の尊敬を抱きつつ、何も縛られず自分の良いと思うものを作っていきたい。

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