uplink渋谷で観たあなたにとっての最高の映画


uplink渋谷が2021年5月20日をもって閉館するというなんとも悲しいニュースが入ってきた。公式サイトにはuplink代表の浅井氏のステイトメントでこう書かれている。

昨年は助成金、補助金もあり、ぎりぎり生き延びることができましたが、今年はさすがに限界を超える状態で、再投資をしても先が見えない状況となり、閉館という決断を余儀なくされました。

また、弊社のハラスメントの問題では皆様にご迷惑とご心配をおかけし、信頼を裏切るような形になってしまったこと、申し訳ありませんでした。引き続き、ハラスメントのない会社づくりに向け、社長及び従業員一同取り組んでいきます。

ステイトメントを見る限りコロナの影響が大きかったようだ。また、被害者の方々がtwitterで発信しているUPLINK Workers' Voices Against Harassmentのアカウントを細かくウォッチしていると、未だハラスメントの問題は「円満」には解決されいない。

いずれにせよハラスメントの件に関しては被害者の方々が納得するような誠実な対応を心がけて欲しいし、ぼくらも随時ステイトメントをチェックするつもりだ。


個人的な話になるが、つい最近までuplink渋谷の近所に住んでいた。

いわゆる奥渋と言われるエリアだが、この奥渋の名付け親も代表の浅井氏によるものだと言われている。
奥渋エリアが大好きだ。その理由の一つがやはりuplink渋谷の存在だった。
酔っ払った帰り道。東急本店通りで缶ビール片手にuplink渋谷のチラシを見るのが日課だった。
「よし、明日この映画観に行くか」と何度思ったことか。50回ぐらいか。
あの建物も好きだった。初めて行くときはどこの入り口から入ればいいんだろうとドキドキした。
東京に上京したとき、単館で映画を観る自分に酔っていたがそんな感情はすぐに消える。ベタな表現だが、映画を観た瞬間にその内容に酔ってしまうからだ。
あのスクリーンの大きさも好きだった。観客との一体感が得られる、絶妙なキャパシティ。

とにかく悲しい。1つの青春が終わった気もするが、まだ吉祥寺も京都もある。
ぼくのuplink愛はまだまだ続けられる。井の頭線に乗って、東海道新幹線に乗って、また青春を始めたいと思う。

今回の記事では「uplink渋谷で観たあなたにとっての最高の映画」を特集したいと思う。
インスタグラムのストーリーで募集し、uplink渋谷愛あふれる感想を頂きました。
皆様ほんとうにありがとうございます。

そしてuplink渋谷、大好きだ!!!!!!!!!!!!!!!

坪田塁(脚本家/演出家)
→渋谷UPLINKの思い出は数多あるのですが、シュヴァンクマイエルの『悦楽共犯者』のことを書きます。
『悦楽共犯者』はヤン・シュヴァンクマイエルにとって『アリス』、『ファウスト』に続く、三作目の長篇映画で、自分のフェチに真剣に向き合う人々の映画です。

なんだそれ。

じつは日本初公開の1997年8月(当時22歳)に渋谷のユーロスペースで観たんですけど、このときは、「やべえな」って「すげえの観た」ってレベルの感想でした。

だって想像を遙かに超えるフェチとフェチが交差してやがてカオスと化す……しかもそんな映画に構想25年もかけたっていうんですよ。やべえじゃないですか。
それですっかりシュヴァンクマイエル好きにはなれたのですが、どうしてか『悦楽共犯者』を観なおそうとは思わず、かれこれ10年以上も経って、たまたまネットで「『悦楽共犯者』は、サド、マゾッホ、ブニュエル、エルンスト、フロイト、ブルークという6人の『エロティックな趣味人』にささげられている」なんて書いてある記事を見つけちゃったんですね。

なんだそれ。

そんなこと言われたらもう一度観てみないとと探したらば渋谷のUPLINKで上映されるということで、2011年の11月「ヤン・シュヴァンクマイエル長篇傑作選」で二度目の『悦楽共犯者』を観ることができたんです。「サド、マゾッホ、ブニュエル、エルンスト、フロイト、ブルークという6人の『エロティックな趣味人』にささげられている」かについてはわからなかったのですが、

――UPLINKで観るとまた独特の趣というか妙味があるな。

なんて思ったことを憶えています。

その妙味が忘れられず2015年の9月にずっと廃盤になっていたDVDの発売を記念して催された「This is チェコアニメ! 特別版 シュヴァンクマイエル監督『悦楽共犯者』DVD発売記念 上映会」でふたたびUPLINKに訪れてしまうほどです。それゆえ僕にとってシュヴァンクマイエルを観るのにベストな渋谷UPLINKが閉館するのはとてもとても悲しいことです。
大切なんですよ。意味不明で狂っている、芸術と娯楽の境界線なんて議論がどうでもよくなるような映画の数々が観られる場所というのは。
ありがとうございました。
閉館までにまた伺おうと思います。


Tamutamu(退職間近のアパレル販売員)
→数年前、なんとなく気になっていた「サーミの血」を鑑賞しました。少数民族の背負う過酷な宿命に抗うたくましい少女の姿に感銘を受けると共に、救いようのない現実に怒りを感じたことを覚えています。UPLINKで配給がなかったらこの映画を知ることも、サーミ人の実態を知ることもありませんでした。感謝しています。渋谷の閉館は非常に残念ですが、今後のご活躍をお祈りいたします。


Taichi(学生)
→「ヤバい!始まっちゃう!急ごう!」
さっきまで呑気にタピオカを飲んでいた仲良し3人組は、奥渋を全速力で駆け抜けた。冒頭5分間を見逃した『メランコリック』は、コメディとシリアスのバランスが心地良く、映画全体が不思議な魅力を放っていた。
映画館は特別な場所である。僕は映画のオチを忘れることはあっても、誰と何処で観たのかは絶対に忘れない。だから、素晴らしい空間を提供してくれたアップリンク渋谷が閉館してしまうことはとても寂しい。
ニュースを見て落ち込んでいた矢先、「最後にまた観に行こうよ!」とラインが届いた。皆、同じことを考えていたらしい。次は時間に余裕を持って観に行こうと思う。


Kiyoko(渋谷で働く会社員)
→uplinkで映画観ない? そう誘われて初めて訪れたのは18歳の時。渋谷の喧騒を抜けた先、uplink渋谷は濃厚なカル チャーの匂いを纏って私を迎えてくれた。 最初の一本は岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』。 家族、花嫁、結婚式。この映画は「普通の幸せ」とされるそれらを一蹴し、「私の幸せ」につい て描かれた物語。「普通」に疑問を持ち、迎合することが苦痛だった時、この映画は「自分の幸 せ」を追うことを後押ししてくれた、大切な1本だ。 それから何度も訪れたけれど、いつでもuplink渋谷に行くのは「映画を見たいとき」ではなく 「uplink渋谷で映画が見たいとき」だった。あの場所で観たい映画があり、あの場所でしか感じ られない感動があった。 思ったより駅から遠くて早足で向かうことも、見てない映画のグッズを思わず買うことも、つ い廊下でチラシをたくさん取ってしまうことも、全て愛おしい思い出だ。あの場所は無くなって しまうけれど、他の場所で、誰かにとっての強烈な「初めてのuplink体験」は生まれ続けるし、そ んな体験をさせてくれる映画館であり続けて欲しいと思う。


H.N(編集者)
→久々のuplink渋谷で「JUNK HEAD」を観た。平日の上映だったけれど、「孤高のクリエイターが7年もかけて製作したストップモーションアニメ」という狂気の謳い文句も手伝ってか、こじんまりとした空間に大人たちが身を寄せ合っていて、なんとなくだけど「JUNK HEAD」を見つけて、ここにたどり着いたはぐれ者の仲間意識みたいな空気感もあった。「お前も観に来たか」「分かってんじゃん」みたいな。そんな期待をちゃんと飲み込んでいくクオリティーだった。その中でも、元いた地上から奈落に落ちていった主人公が言うセリフをまだ覚えてる。「地上では思えなかったけど、今は生きてるって感じがするんだ」大げさだけど、uplink渋谷も私の生きていられる場所の一つだったな。


(趣味沼柔整鍼灸師)
→「LUCKY」は今も好きな映画
パリ、テキサスに出演されてたハリーディーンスタントンさんが主演、気になり見に行きました。多分この時が初めてのUPLINKで少しソワソワしていたと思います。映画は死を間近に感じた1人の老人の日常で、少しだけ自分の死を感じた事のある私にはじわぁっと響いてきました。変わらない日常の尊さ。でもかっこよく生きて、気持ち良く死ねたら良いなと、観た時と変わらず思っています。UPLINKで観ることが出来てよかったです。
小さめの劇場で、淡々と過ぎる日常の映画
落ち着いて没頭することが出来ました。UPLINK渋谷の閉館は大変寂しいです。
吉祥寺にも足を運ぼうと思います。
素敵な映画との出会いをありがとうございました。


YKN(映画配給会社)
学生時代から数え切れないほど渋谷に降り立ったことはあるが東急本店通りを進み、アップリンク渋谷で初めて映画を見たのは結構最近のことだったと思う。
初めは慣れなかった手作り感のある座席も次第に魅力に変わっていった。
アップリンク渋谷で映画を観るということが、他の劇場での鑑賞より少しだけ文化的に感じるのは私だけだろうか。
同じ1800円を出すなら大きな劇場で見たほうがいいと思う反面、あの場所での映画体験は言語化できない付加価値があったように思う。
細い廊下でトイレに入っていく人と無言の挨拶をかわしながらチラシをとったこと、カップホルダーがなくて床にドリンクを置いたこと…など作品より劇場の印象が強いが、そんな中でも印象に残っている作品は2020年パンデミック直前で公開されていた「スウィング・キッズ」だ。公開してからしばらく経っていたがアップリンク渋谷でギリギリ上映していて、劇場で観れる最後のチャンスだと思って滑り込んだ。ちょうど劇中のステージと、スクリーンの大きさが重なって妙な臨場感を覚えた。それもアップリンク渋谷こだわりの音響システムや計算された座席の配置のおかげだったのかもしれない。
鑑賞後の帰り道、あのビルの外で傘をさしながらsing sing singをiTunesでダウンロードしたことはなぜか良い思い出。
しばらく足を運ばないあいだに閉館のお知らせが届いた。
文化を守るということを他人事化してはいけないと身にしみて感じた。
ありがとう、アップリンク渋谷。


kota (新卒入社のアパレル販売員)
アルバイト先の女性に、同性愛者であることをカミングアウトされた。
突然のことで驚いて、「何か配慮すべきもの」であるかのように、気遣うことが優しさだとそのときは思った。
でもそれが間違っていたことに気づいたのは、アップリンク渋谷で「カランコエの花」を観てからのことだ。
相手を思う優しさは、時に相手を傷つける。
配慮ではなく、ただありのままを受け入れるという、単純であるが難しい、人とのコミュニケーションの本質を知った。
42分の短編映画を、あの客席とスケールで鑑賞したことは忘れない。
渋谷の閉館はとても残念だが、
世間で陽の当たらない人たちへの些細な優しさに溢れた映画をたくさん観せてくれたアップリンクに、僕はこれからも通うつもりだ。
本当にありがとうございました。

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