香川県丸亀市のラッパーfu-g。
キレキレのG-Funkサウンド、耳にストレートに響くラップ、周囲の人間を愛する心の叫びはリアルな生活に寄り添い、リスナーの共感を得てそれらを強く魅了する。fu-gとは一体どんなラッパーなんだろうか。メディア初公開のインタビュー。
――はじめまして!fu-gさんの大ファンのThey sayのNosakaです。今日はよろしくお願いします。
ありがとうございます。よろしくお願いします!
――リリックにも書かれていますが、音楽活動されながら同時にお仕事をされているんですよね?今日もお仕事終わりでしょうか。
そうですね。時間的には子供が寝てからって感じですね。
――お疲れ様です。まずはヒップホップを好きになったきっかけを教えてください。
中学生の時って、AK-69とかCHEHONとかをよく聞く時代やって。高校生の時に1個上の先輩が3人ぐらいフリースタイルをやっとるみたいな情報をSNSで手に入れて、それを友達と観に行ってからは自分でし始めたっすね。
――その時代も名古屋のシーンがすごく熱かったときですね。fu-gさんの名曲、『大合唱』では「名古屋」というワードも使われていましたね。
はい。今回のトラックは全部Funk Stoneが作ってくれとって、その人が名古屋ですね。
――その繋がりはどうやって生まれたんですか。
SNSですね。Funk StoneもすごくG-Funkで、自分もこういう音楽をしよったんでメッセージをくれて、自分のCDを買ってくれよったんですよ。それで、ストーリーとか見よったらトラックメイカーなんやと知って、1曲提供してもらったところがスタートですね。もうなんかこの人の音で無限に作れるわと思って、アルバムを作りましょうとなりました。
――自分でもトラックメイキングされているようですがどのようなツールで作られているんですか?
一緒に遊んどった先輩がビートをiPadで作る人やって。その人がおらんようになった時にどうやって遊ぶかつったら、もう自分で作るしかなくて作り始めたっていう感じです。
あと影響受けたのが沖縄のCHOUJIさんがでかいですね。
――fu-gさんの楽曲といえばG-Funkですが、当時香川のクラブでG-Funk中心のイベントに遊びに行ってたんですか?
そうですね。先輩がやっていて。それこそラップをするきっかけになったKUYA MIGUELがすごく西(ウェストサイド)な人で。
――香川ではウェストサイドなシーンが根付いていて受け継がれているんでしょうか。
シーンで言うと、今の30代後半とかの人になりますね。
――様々な音を聴かれていたと思いますが、なぜG-Funkにこだわり、それを表現されているんでしょうか。
完全にトラックですね。正味英語やと和訳見んと分からんので、やっぱトラックですね。
――fu-gさんのトラックは、G-Funkの重たさと同時に浮遊感みたいなものが表現されていますね。G-funkで1番影響受けたアーティストは誰ですか。
Tha Dogg Poundのあたりがトラック的には好きですね。
――自分で盤をゲットして聴いていた?
そうっすね。でも盤ってなると、100円200円のジャンクコーナーからしか買わんで、たまたまあればって感じですね。
――子供時代はどんな音楽を聴いていましたか。
お父さんがヘビーメタルのバンドをしとったんで、車とかでもやっぱりそれがかかっていてめちゃくちゃ聞かされよったっすね。けど中学校でヒップホップとかレゲエとかを聞くようになったっすね。
――音楽がすぐそばにある子供時代を過ごされていた。
そばにあったっすけど、興味はなかったっすね。あー、かかっとるなぐらい。ヘビメタがあんまり好きじゃないんで。
――ジャンルがとても細分化されていて難しいですよね。
はい。難しいですね。なんか1回お父さんと一緒にヘビメタのイベントに行ったことがあって。ドラムがバチをバコーンって投げて俺の真横に飛んできたて、こんな危ないところ来れんわみたいな笑。でも音楽的なんはやっぱりバンドやなと思うっすね。曲もループじゃなくてずっと弾き続けとるんで。
――曲を聴いているとGarageBandというMACのデフォルトのソフトで曲を作られているとわかりますが、それにはこだわりがあるんですか。
全然ないです。最初はケータイで作っちゃったんで、GarageBandなんですよ。そのままの流れでパソコンに切り替えた時もGarageBandを入れとって、何回かはLogic Proに変えた方がええっていうタイミングがあったんですけど、いろんな面でうまいこといかず、まだ手に入れてないですね。
――最近GarageBandもすごく機能がいいという話を聞きます。
そうっすね。なんかもう慣れてて。切り替えのタイミングを失ってはっていう繰り返しですね。
――鍵盤なども自分で弾かれていますが、音楽的な教育を受けられていたんですか。
受けてないですね。
なんかウエッサイといえば、シンセやっていうイメージで。地元のいろんなもん売っとる中古屋さんで、たまたま900円ぐらいだったヤマハのめちゃくちゃでかいシンセサイザーがあって、それを弾き始めてって感じですね。
――ライブは香川の都心部でやられることが多い?
そうっすね。都心部が多いですね。でも、丸亀でもクラブやバーでしたり。どっちが多いかって言われたら、めちゃくちゃ微妙なところです。今は高松と丸亀、両方ですね。
――地元の友達同士で香川全体のシーンを盛り上げていこうという感じがすごく伝わりますが、今の地元のシーンをどうしていきたいか語ったりはしますか。
めちゃくちゃ自分は秘密主義なんで、ほんまに信用しとる近くの友達とは語りますね。
――最近のトラップシーンをどう感じていますか。
流行っとるけんええかもしれんすけど、なんか音楽じゃないなって思いますね。ベースラインとかも、あれってどうなんかなみたいな。全然否定するつもりはないんですけど、トラック的にはあんまりかなって思うっすね。
――ベースラインが音楽的ではないから気持ちよくないと感じるということですか。
そうですね。俺実際トラップを作らんので分からんすけど、なんか誰でも作れるんじゃないかなってめっちゃ思ってしまうっすね。やっぱりメロディーラインが好きなんで、音程がしっかりあってほしいですね。
――お仕事は建築関係ですか。
そうっすね。道路系っすね。
――それが端的にわかるリリックもたくさんありますよね。『ただ今は』の「合法ストリートで金稼ぐ」がすごく好きなんですが、この曲はどういう思いで作られたのですか。
あれってもう俺しか書けんのですよ。やっぱり仕事も辞めたいし、ひたすら音楽を作りたいんですけど、子供とかおったらなかなかそういう方向に転換するのが難しくて。そのむずがゆさっていうのが、あの曲ですね。
――お金というものをどう捉えたらいいのか自分でもまだ分からない感じが伝わってきます。「合法ストリート」っていいフレーズですよね。
俺、全然非合法じゃないんで笑
――もうそれは合法なのでは?と思うほど皆が非合法をアピールしすぎているので、この「合法ストリートで金稼ぐ」というラインが最もイリーガルだなって感じました笑
ありがとうございます笑
――『公園成長記録』は、公園のベンチで子供を見守っている視点が見えて、これはfu-gさんにしか書けないものだと思いました。
はい。まさにそれですね。
――このリリックは子供と公園に遊びに行ったときに「ラップにできる」と直感的に思ったのですか。
そうっすね。今子供は5歳と3歳なんですけど、その頃、上の子がめちゃくちゃ公園好きやった時期だったんですよ。めちゃくちゃビビリなんだけど、前に出来んかった遊具ができるみたいな、回を重ねて成長が見えてきて。それこそ体重測ったりとか身長測ったりとかって保育所でするんですけど、それって数字で目に見えるじゃないですか。そうじゃなくて俺らが遊具を通して成長を感じられるっていうのが1つと、公園って別に市町村は必ず作らんでもええわけじゃないですか。市が作ったところでお金になるかって言われたら、多分ならんと思うんで。それでも作ってくれる丸亀市、ありがとうじゃないけど。
――主役はあくまでも子供自身だという部分も含めて、トラックもエモーショナルで最高です。最終的には子供にも丸亀市にもリスペクトしているということですよね。
そうっす。それが裏テーマですね。
――子供の目線に合わせて座っているんだろうなというリアルな目線がリリックで感じられる。その状況描写が素敵だと思いました。
それは意識するっすね。情景があるというか、 すごく「ヒップホップ」を感じる部分ですね。
――『睡魔』は睡眠障害の曲ですよね。過眠症みたいな?
実際病院も行ってないんで分からないんですけど、勝手に寝てしまうというか。最近はちょっと意識して起きとんですけど、不意に寝てしまうっすね。
俺はショートスリーパーだ!って人っておるじゃないですか。俺は寝ずにリリック書いてとか言って。でも正味俺も寝てないのは寝てないんですよ。寝てないんやけど、それってもうアベレージじゃないですか。やっぱり曲作ったり量産するためにはやっぱりアベレージやと思うんで、そこを歌ったところで、自分のやんじょる感を出しよるだけじゃないですか。昨日は3時まで曲作って、朝から仕事とかってもうなんか自慢にしかならんし。でもその積み重ねで僕は居眠りで事故したりとかっていうのも3回ぐらいあったし。途中で寝てしまったりとかっていっぱいあったんで、逆にそれを歌ったっすね。
――fu-gさんは常に今のラッパーたちのカウンターの立場を意識的にやられている?
あー、確かにありますね。
――『睡魔』も『公園成長記録』もそれが如実に感じられます。
はい。よく最近聴くな、みたいなリリックのカウンターがありゃ歌うっすね。
それもヒップホップかと思ってますね。同じことは歌えんすね。
――カウンターというか、天邪鬼みたいな精神はどこで培われたんですか。
わからないですね。どこなんですかね。でもKUYA MIGUELに18、19の頃めちゃくちゃ良くしてもらいよって。でもその頃周りからしたら、あいつはついていってるだけやみたいなんがすごくあって。それがすごく嫌で、自分でやるようにしたっすね。秘密主義になったんも、完全にそこっすね。
――誰にもわからないように1人でやって、全部トラックメイキングもしてやるよみたいな。
もう制作とかも全然やんじょる感を出したくなかったし、急にリリースしたいみたいな思いがすごく強かったですね。
――『絶対音感』はこれまでお話していたようなカウンターについてラップされています。「ある日言われた言葉あなたの音古いな」からTikTokの話をし、「こちらはあくまで生歌のラッパー」というリリックに確固たる意志がある。そしてライブという現場をすごく大事にされていると感じました。
ライブはもう1番ですね。やっぱり自分の中で最新の音楽がライブになるんですよ。リリースする前にライブするし、最新の音楽がライブになるし。ライブってやっぱり生やし、同じ曲歌うんでもやっぱ違うじゃないですか。同じ歌にしても、前歌った時よりもライブの前の言い回しが良かったりとかしたら食らうし。お客さんが毎回違うし、同じ人がおるけど違う人もおったりとかっていう生のフリースタイル感がすごく好きで。ほんで、そこでかませるやつがやっぱり本物やなって思うんで、かまし続ける場所はライブやなと思いますね。
――日本語をはっきりと意識し発音しつつ、香川の方言もナチュラルに使いこなしていて、新鮮さも感じます。
意識はしていないけど、どれだけ自分がナチュラルに喋れるかですかね。自分のリリックには多分英語もめちゃくちゃ少ないと思うし、どれだけ自分が喋りやすいかですね。
――YouTube で観たfu-gさんのラフに動画だけ撮っている感じも好きです。
そうっすね、今でも好きっす。続けたいっすね。
――普通のミュージシャンは消してしまったりしますけど。やっぱそこが『公園成長記録』じゃないですけど、「ちゃんと俺の成長を見ろ」みたいなことなんですかね。
そうっすね。消さんすね。
――次の作品はどのように考えていますか。
明確な時期の予定はないですが、今のところEPかアルバムかって感じですね。とりあえず今のところはさっき言った自分の信用できる2人の作品が出るんで、その作業を必死でしていますね。
――トラックやミックスを一人で全部やるのは大変ですよね。
いやでもね、修行ですね。
――制作はずっとされていますよね。
そうですね。制作するし、結構周りの人のミックスとかもするんで。ミックスマスタリング作業ですね。REC含めて。
――全部やられているんですね。マスタリングの知識はどう得たんですか。
マスタリングに関しては正味知識は浅いですね。もう、耳だけで。1stはプロの人にやってもらったんですけど、そっからもう自分でやりだして。昔の音源とかってめちゃくちゃ音悪いんですけど、この先で自分のことを知った人が遡った時に昔下手くそやんみたいな、そういうのを感じてほしくて。作品ごとに自分のミックスとかマスタリングやビートがうまくなっていくみたいな成長を見てほしいですね。
――fu-gさんの今後の展望を聞かせてください。
自分は香川から稼げるラッパーになりたいっていうか、香川のやつらも出な稼げんと思っとんですよ。それがやっぱり悔しいというか、香川の中で音楽を作って生活をちゃんとしとるっていう前例がおらんのっすよね。自分の土地でこなせりゃいっぱいお金ももらえるんちゃうんかなっていう感じにしたいすね。それこそ最終的にはレコード会社を作って、オールジャンルの音楽をやりたいですね。
――東京の会社でなくても、地元で会社を設立してお金を落とすことはできるということですもんね。
そうっすね。出ないかんと思っとる考えがなんか悔しいっすね。
――ご家族はラップ活動のことをどう思われているんですか。
どうなんですかね。出会った時からラップしよったんで、そっからは何も言えんし。でも、やっぱりシンセ買うとかってなったら、自分が音楽で稼いだ金しかでしか買えんので、やっぱりそこをちゃんとしとったら大丈夫かなみたいな。
――家族間でちゃんとしたルールがあって、シビアでいいですね。
それこそ土曜日イベントライブして、帰ってきて公園行くみたいな。それが出来ずに1回6か月休止したっすね笑
――公園に行かずに怒られた?
そうっす。なんか眠くて寝たりしよったんで。だったらこうなるよって約束をしとって、約束を守れず1回休止したっすね。
――それもリリックで聞きたいです。
いつか笑
――fu-gさんにしか書けないですもんね。
でも基本的には応援しようかなって感じですね!
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fu-g
1997年香川県丸亀市レペゼンのラッパー
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