27歳のイ・スラは、250万円の学資ローンを返済するため、毎日1本、文章を書いてはメールで配信するプロジェクト「日刊イ・スラ」をひとりで始めました。
「誰からも依頼されずに文章を書きます。月・火・水・木・金曜日は連載して、週末は休みます。購読料は1カ月で1万ウォン(約千円)、20編送ります。1編が500ウォンなので、おでん一串よりは安いですが、それ以上に満足していただけるように努力します」
書かれているのは、子供時代の淡い恋心、山登りでの祖父との喧嘩、恋人と誕生日に交わした言葉、文章教室での子供たちの作文、母が自分を妊娠したときの記憶、ヌードモデル時代の話。
「何かについて気になり始めたら、私たちは動きだす。好奇心は愛の始まりだから」
……(「手紙の主語」)
「あなたを身ごもったときのことを正確に記憶している、と母は言った」
……(「懐胎」)
「逆立ちをしながら祖父のことを考えた。祖父もよく逆立ちをする」
……(「あなたがいるから深いです」)
最善を尽くしたら私は絶対に転ばなかった。テウもそうだったはず。
……(「滑って転ぶ練習」)
本作ではその「日刊イ・スラ」シリーズをもとにした2冊から、41編の文章を厳選してオリジナル版としました。
(連載当時 ©Ryu Han-kyung)
イ・スラ(李瑟娥)
1992年、韓国・ソウル生まれ。「日刊イ・スラ」の発行人であり、ヘオム出版社の代表。雑誌ライター、ヌードモデル、文章教室の講師として働きながら、2013年に短編小説「商人たち」でデビュー。作家活動を始める。2018年2月、学資ローンの250万円を返済するために毎日1本、文章をメールで送るセルフ連載プロジェクト「日刊イ・スラ」を開始。たちまち大きな反響を呼び、半年分の連載をまとめて同年10月に刊行された『日刊イ・スラ 随筆集』(へオム出版社)は600ページ近い分量にもかかわらずベストセラーとなる(2018年の全国独立書店が選ぶ「今年の本」に選出)。「日刊イ・スラ」はその後もシーズンを重ね(現在は休載中)、随筆集『心身鍛錬』、インタビュー集『清らかな尊敬』、書評集『あなたはまた生まれるために待っている』など、これまでに9冊の本を出版。エッセイ、インタビュー、書評、コラム、漫画など、ジャンルを越えて執筆する。今も週に一度、10代の若者に文章を教えていて、イベントでは歌も歌う。毎朝の日課は、逆立ち。
ウェブサイト: https://www.sullalee.com/
インスタグラム: https://www.instagram.com/sullalee/?hl=ja
- 訳者紹介
原田里美(はらだ・さとみ)
1977年、東京都生まれ。アートディレクター、グラフィックデザイナー。2012年から新大久保
語学院で韓国語の勉強を始め、現在は韓国文学クラスに在籍中。2016年からソウル大学語学堂に留学し、その間にソウル市内の本屋を30軒ほどめぐる。
宮里綾羽(みやざと・あやは)
1980年、沖縄県那覇市生まれ。多摩美術大学卒業。那覇市栄町市場にある宮里小書店の副店
長。著書に『本日の栄町市場と、旅する小書店』(ボーダーインク)。
- 原書『日刊イ・スラ 随筆集』刊行時の推薦文(一部)
物語の力は思った以上に大きく、広まる速度は思った以上に速いから、スラのように自分の話をリアルに伝える人が背負う重さで(何かはわからないがとにかく重い何か)、スラが押しつぶされないように願っている。
イ・ラン(ミュージシャン、作家。『話し足りなかった日』ほか)
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