経済的に自立したい。孤立したくない。人間関係で充実感を得たい。子育てがしたい。自分の子供がほしい。仲良く家族で暮らしたい。
どの希望も矛盾していないのは明らかだが、全てを叶えるのはどうにも難しく感じてしまうのはなぜだろう。
手探りのヒントとして、「はたらく女性」の話を聞いてみたい。
今回お話を伺ったのは8歳・3歳・1歳の3人のお子さんを育てながら事業を経営する、りさこさん。
2013年に多摩美術大学芸術学科を卒業後、法律事務所の事務職として4年間勤務。退職後、旦那さんと共に太陽光発電事業を立ち上げたという。
美大から法律事務所、太陽光発電…!意外なキャリアが続くので、まずはキャリアの全体像を聞いてみることにした。
「キャリアを積み上げる」ってなんですか
法律事務所にはどのようなきっかけで就職されたのでしょうか。
大学に入学した頃にリーマンショックがあり、就職活動はかなり厳しい状況でした。どこの会社も「総合職採用は1名」とかで、当時行きたかったISSEY MIYAKEも、1つの枠を1000人程で取り合う状態でした。最終選考までは進めたのですが最後に落ちてしまって。「もう頑張れる気がしない…」と落ち込んでいた時に、姉が紹介してくれたのが弁護士事務所の事務職でした。姉も別の弁護士事務所の事務職として働いていたんです。
弁護士事務所の事務職って、どんなことをするんですか。一般的な総務に近いでしょうか。
そうですね。裁判所に提出する書類を揃えるですとか、相続案件であれば戸籍を揃えて相続関係図を作るとか。
思ったよりも弁護士っぽい!法律とかの勉強をしながらになるんですかね。
勉強というよりは、作業をしながら何となく分かっていくイメージですね。何か資格が取れるほどの知識が得られるかというと、そこまでではないです。
仕事は楽しかったですか。
すごく楽しかったです。人の人生って"事実は小説より奇なり"じゃないですけど、すごく面白いんですよ。7年の行方不明の末、仮死亡の手続きをした1年後にふらっと戻ってくる実写版放蕩息子や、離婚訴訟の申立書の内容など…。繁忙期と閑散期がはっきりしていたので、閑散期には事務所にある訴訟記録をずっと読んでいました。
法律事務所を辞められたきっかけは、例えば忙しすぎてプライベートが取れなかったとかでしょうか。
フルタイムでしたが残業はなく、仕事に疲弊してプライベートが取れないということはなかったです。ただこの仕事を極めたいか、例えば資格取って税理士になりたいかと言われると、そこまでの興味はなかったんですよね。
27~28歳で出産のタイムリミットも考え、そろそろ1人目が欲しいなと思っていた時に、夫が副業で太陽光発電所を作る!と言い始めまして。夫は夜中の2時に帰って朝の6時に出勤するような超激務ワーカーだったので、私もフルタイムで働きながら子育てをするのは現実的ではないと思いました。家庭を回せるライフスタイルにしたいという思いもあり、法律事務所を退職しました。
その後は妊娠、出産、子育てが始まっていくわけですが、今20代を振り返って思われることはありますか。
"この先に積み上げていくキャリア"みたいなことを考えていなかったなとは思います。正直入れればいいやって気持ちでしたし、先のことをあまり考えていなかったんですよ。例えば「法律関係の資格を取りたいから法律事務所で働く」とか、そういう気持ちもなかったので、当時の働きが一時期の経験で終わってしまった感覚があります。
偶発的に始めた仕事からキャリアの道を作っていくか、あるいはビジョンから逆算して仕事を選んでいくか、そういった選択ができていれば、という感覚でしょうか。
そうですね。ただ、当時学んだことが結果的に今の仕事に繋がっている部分もあります。不動産登記も読めますし、何か問題が起きて弁護士の先生に相談する際に、関係する法律がなんとなく分かるから話が早かったりとか。
「子育て」というキャリア
子育てについて聞かせてください。旦那さんの激務は続いていますか。
コロナでリモートワークが増えたり、裁量重視の風潮になったりで以前よりは余裕ができました。基本はカレンダー通りの休みなので家事や子育ても頼める時は頼んでいますが、急な出張とかは時々ありますね。
3人のお子さんを同時に育てるってどうなってるんですか…。何が一番大変でしょうか。
基本的に大変なことは増えていくばかりです。大きくなるにつれて食べる量は増えるし、着る服も大きくなるので洗濯物は重くなります。幼稚園に行き始めればお友達と揉めちゃったとかもあるし、小学校では勉強はどうだろうとかも見ないといけない。気にしなければいけないことも増えていきますし、本人と話し合う時間も必要になってきます。3人もいるとお友達の顔や名前まで覚えるのはかなり難しい。(笑)
「赤ちゃんは喋れないから、仕事で大人と話せるのが癒し」と育休明けの先輩から聞いたことがあります。コミュニケーションが取れない相手と対峙し続けるのはしんどいだろうと想像します。
ずっと赤ちゃんを心配し続ける疲れももちろんありますが、1日中「うんちしたの?」みたいな会話ばかりで、「あ〜頭使いたい!」となっていました。
当時家の設計も始まっていたのですが、内装デザインは素材選びから全て自分でやっていました。設計士さんとの打ち合わせも週一で入っていたので、ほぼ仕事でしたね。
赤ちゃんを抱えながらの設計はかなり大変そうですが、大人と話す時間という意味ではよさそうですね。
赤ちゃんすぎると寝てばかりで、実はそこまで手がかからなかったりもするのですが、1-2歳の頃がちょうどコロナ禍でして。陽性になってしまったので、1ヶ月間2人きりで隔離生活をしました。あれはさすがに大変でしたね。
1ヶ月…!何をしていましたか。
ずっとYoutubeで怪談を見ていました。(笑)
怖い話、好きなんです。
「子育て」と会社等での仕事は、どちらも"働く"という意味では同じだと思うのですが、違いはありますか。
どちらも大変ですが、会社での仕事は「達成感」があるなと最近感じています。「この仕事が終わった、乾杯!」とできるし、頑張れば誰かが認めてくれる。充実感が得られますよね。
一方で子育ては日々のタスクは山ほどあるんだけど、達成感が全くないんです。むしろできていないことの方を考えてしまいます。今日は掃除もできなかった、洗い物も溜まっている…と。
確かに…。どんなに長い仕事であっても、途中で区切りをつけて打ち上げができます。子育ては難しいですね、誕生日や卒業式で祝っても洗い物は毎日続きます。
卒業したら入学して、取り留めがない…。
代わりがいないというプレッシャーもありますね。
仕事の場合は、最悪休めばいい・辞めればいいと思えますもんね。
そうですね。真面目に向き合うほど、できなかったことを考えてしまい滅入ってしまうように思います。最近は色々なものを手放して、だいぶ楽になりました。家が汚れていても死にやしない、と。
話は少し逸れますが、子育てとフルタイム勤務を両立している方はどうやって回しているのか、気になります。
パッと思いつく限りだと身近にはいないですね…。現実的ではない気がしてしまいます。
保育園のお友達のお母さんは、子供が熱を出すとその日は1日潰れてしまって、子供が寝た後の夜中に仕事をしていると聞きました。
しんどすぎる…。共働きが一般的になった分、子育てをしながら働かざるを得ない状況なんですかね。
私の周りだと、仕事が好きで働かれている感じがしますね。
子育てと仕事。
子育ての変動性と、仕事、特に会社勤務の柔軟性の無さは正直相容れないように感じてしまう。子育てと会社員としての働き方はトレードオフの関係なのだろうか。
ただ子育ては一生続くものではない。いずれひと段落した時に、時間がぽっかり空いてしまうような気もしてしまう。
とある20代の女性(会社員)は「相手が会社員を続けているのに自分だけ辞めてしまったら、関係に不均衡が生じてしまう気がする」と仕事を続けることを望む。
「仕事が好きだから」「子育てがひと段落した時のぽっかりに備えて」「対等な関係を保つために」
文字通り多様な「はたらく女性」のあり方を、引き続き聞いていきたい。
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