バレエと身体

「バレエ習ってるの。」

次は大抵「どっちのバレエ?バレー?」

それが「え、あんた踊るの?」と聞こえることもあるから、恥ずかしいのを隠しながら「バレエ。踊る方」と静かに答える。


私の身体を私のために使う時間。

私が私の身体だけを見る時間。


大人になってからバレエを踊るとはそういうことなのだと思う。

軽くストレッチをしてからバーレッスン。(バー=バレエ教室の広告とかで子供が掴んでいるあの、長い棒)

先生が即興で作る振付を即興で覚えて、踊る。「記憶する」がいつの間にか古風な仕草になっているように感じるけれど、バレエは記憶しないと始まらない。どんなバレリーナでも最初は「3個目のタンジュでプリエね」と頭で覚えていたはずだ、多分。


記憶してようやく始まる身体ゲー。

腕や脚や腹や背中や首や、もうそれは文字通り頭の先からつま先まで、同時に命令を出す。何故そんな角度で首を傾けるのか。バレエにも正解があるからなので、自分の首の角度を創りたい人にはお勧めできない。

自分以外の身体には、例えば「手を動かしてほしい」とか命令しない。振付やバレエの正解を教えてくれるのは先生だけれど、結局私の身体をどう動かすのかの最終決定権者は私。命令しても全然従ってくれないので本当のラスボスは私の身体。


バーレッスンが終わったらセンター。

スタジオ全体を使って、1人か2人かで舞う。

こうなると舞台ゲーでもある。

人に見られながら踊るとやっぱりアドレナリンは出るし、上手にできないとちゃんと落ち込む。


鏡の中の自分を追い続けながら踊る。

ものすごい飛んでいるつもりでも小さな肉がちょっと宙に浮いただけだし、必死の思いで脚を上げる心の内が丸見えだったり。

落ち込むけれど、続けたいから認めることにした。

私はバレリーナじゃない。数年間運動という運動もしていない。筋トレ、大嫌い。筋肉がなくても動く思春期前の身体でもない。

キレイとは思えなくても、まあ頑張っていこーやと毎週身体に語りかけるのだ。


私が私の身体を見ていない時間。首を前に出してPCを覗き込み続ける。肩のキーンとした痛みで、自分の身体に気づく。

浮腫みも腰痛も食いしばりも私のデフォルト装備となったけれど、このだるいふくらはぎを引き受けるのもやっぱり私なのか。


荷が重いけれど、次は私の番。トンベパドブレグリッサードグランパドゥシャをするしかない。

Yurina Shibata
Yurina ShibataWriter

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